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紫外線を適度に浴びるメリットの詳しい検証

紫外線を適度に浴びるメリットの詳しい検証 Andrea Sercu (Today's Image誌の寄稿編集者)

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メリット:生命力

とても大きなメリット

細胞培養によるビタミンDの研究

UVBを得る?


メリット:生命力

皆さんの多くは、適度な紫外線を浴びることの基本的なメリットをご存じでしょう。 ビタミンDの生成、有益な免疫抑制、日焼けからの保護、および気分の変化などです。 しかし、これらのメリットについて詳しいことはご存じないかもしれません。 それに、依然として誤った情報も多いのです。
当誌のレポーターは、紫外線が実際に私たちの体にどのような影響を与えるのかを知るために、光生物学分野の専門家を訪れました。 この記事では、日焼けをビタミンDの源として考えます。 ほとんどの人がビタミンDについて知っていることは、あちこちから得た、限られた断片的な情報です。 大多数の人は、ミルクがすぐれたビタミンD源であることを知っていますが、その理由を知っている人はほとんどいません。 ミルクに内包されるビタミンDは、栄養上の目的でビタミンDを強化するために加えられた人工的な添加物なのです。 また、紫外線の照射により、この必須ビタミンが体内で安全かつ効率的に、自動的に生産されることを知っている人も、ごくわずかです。

とても大きなメリット

私たちの体では、たえず骨量が増減しています。年をとるにつれて体内の骨密度が減り始め、多くの専門家はこの減少分の補充を助けるためにカルシウムのサプリメントをとることを勧めています。しかし、これはそう簡単なことではありません。骨密度の減少は進行すると重症になり、骨の減少が骨粗鬆症につながることがあります。骨粗鬆症とは、骨がもろく、すかすかになり、骨折しやすくなった状態のことです。
ビタミンDは、体が強い骨を作るために必要なカルシウムの吸収を助けます。ビタミンDが欠乏すると、体は消費するカルシウムのおよそ10%から15%しか吸収できなくなります。ボストン大学医学部の医学および生理学教授、マイケル・ホリック医学博士(Ph.D., M.D.)は、ビタミンDがあれば吸収率は2倍になると言います。 またビタミンDは、適切な神経伝達シグナルを可能にすることにより、正常な神経筋機能を維持する機能も果たします。言い換えれば、ビタミンDは、神経と筋肉が共に適切に機能するようにするのです。

Journal of Internal Medicine誌2000年2月号に発表されたデンマークの研究は、ベールをかぶったアラビア人イスラム教徒の女性(日光浴や食事から適切な量のビタミンDを摂取できなかった人々)のビタミンDレベルを、デンマーク出身のベールを付けたイスラム教徒女性(食事から適切なビタミンDを摂取できた人々)とベールを付けないデンマーク人女性(日光浴と食事から適切な量のビタミンDを摂取できた人々)のビタミンDレベルと比較しました。 研究者たちは、ベールを付けたアラビアのイスラム教徒女性では、ビタミンDレベルが非常に低く、筋肉が弱く、痛みが強いことを発見しました。さらに驚くべきことには、食事からビタミンを摂取したが、日光からは得られなかった、ベールを付けたデンマーク人女性においてもビタミンDレベルが低いことがわかりました。
ビタミンDは、いくつかの主要なガンの予防にも有効である可能性があります。「私たちは今では、かつて考えられていたよりも高いレベルのビタミンDが必要だと考えています。 なぜなら、ビタミンDにより前立腺ガン、乳ガン、大腸ガン、卵巣ガンなどの、ガンに対抗できる可能性があるからです。」と、ホリック博士は言います。興味深いことに、日常的に高レベルの紫外線を浴びる南方の気候や赤道近辺の地域に住む人は、この種のガンの発症率が低いのです。 「明らかに緯度の影響があります。」と、バージニア州リンチバーグに拠点を置く産業コンサルタントで紫外線の専門家であるマイケル・キャスウェル博士(Ph.D.)は言います。

サンディエゴにあるカリフォルニア大学の家族・予防医学部が指揮を執った研究により、これらの発見が確認されました。 この研究は、大腸ガンによる死亡率が最も高いのは、高緯度または中高緯度の地域で、大気汚染あるいはオゾンの厚さおよび雲の量が多いか、あるいは比較的多い地域であることを示しました。 これらの要因はすべて、冬季の紫外線照射の低下につながります。 同様に、研究者は白人女性における乳ガン死亡率は、その地域が赤道から遠くなるにつれて上昇し、冬の長い地域で最高になることを発見しました。

細胞培養によるビタミンDの研究

細胞培養研究により、ビタミンDは、前立腺、大腸および乳房細胞をガン細胞に突然変異させずに、健康な細胞に変える可能性があることがわかりました。
ビタミンDと乳ガン、大腸ガン、前立腺ガンの低発生率との関係は謎で、科学者たちは、まだその解明に取りかかったばかりです。 「科学者は、住む地域が赤道から北に遠ざかるほど、これらのガンのいずれかによって死亡する可能性も高くなることを知っています。」と、ホリック博士は言います。 「また、このような地域では体内で作られるビタミンDが少ないこともわかっています。 不思議なのは、ビタミンD自体は、ガンに何の影響も与えないらしいことです。 結局のところ、ビタミンDが活性化した形になるには、肝臓や腎臓で活性化される必要があるのです。」
また科学者によれば、最近、ビタミンDが予防することがわかったガンの原発部分である前立腺、大腸、および乳房には、活性ビタミンDのレセプターがあることを発見しました。 しかし、ビタミンDにこのプロセスを開始させるには、該当部位において、ビタミンDが通常の最低推奨血中レベルよりも高くなければなりません。

  • スタンフォードでの2000年の研究により、ビタミンDが前立腺ガンのガン細胞の拡散を低下させるらしいことがわかりました。
  • 強化ミルクはすぐれたビタミンD源となり得ますが、紫外線を少量照射すれば、体が必要なものを自動的に作り出してくれます。
  • ビタミンDがないと、体は消費するカルシウムのおよそ10%から15%しか吸収できません。
    「ビタミンDは、細胞がその成長を制御できるようにするために、細胞が作った見張り役を果たす物質であり、ガン細胞が成長するのを防ぐ作用をする可能性があると、私たちは考えています。」と、ホリック博士は説明します。

試験管内(細胞培養)研究では、ビタミンDは、前立腺、大腸、乳房の細胞が分化して健康な特殊な細胞を作れるようにし、ガン細胞に突然変異しないようにする可能性があることが示されました。「細胞はまったくガン細胞になるパターンを示すことなく、分化し始めます。」と、キャスウェル博士は説明します。

「ある細胞を分化させ、皮膚細胞や脳細胞や腎臓細胞に発達させるものは何なのでしょうか? 誰にそれがわかるでしょうか? しかし、ガンが発生すると、それらの細胞は、発達すべき本来の形態には分化しません。 それらは正常に分化せず、突然変異を起こして、ガン細胞になります。 ビタミンDは、これらの細胞に規則を守らせて、それらがなるべき細胞になれるようにする傾向があります。」 このようにして、ビタミンDは、細胞の成長制御因子として作用するのです。

研究により、ビタミンDが乾癬の治療に使用できることもわかっています。 また、動物実験では、インシュリン依存性糖尿病(Ⅰ型)を予防する可能性があることも示されています。 さらに、マディソンにあるウィスコンシン大学の生化学部により1997年に行われた研究によれば、「赤道地域では発症率がほとんどゼロなのに、緯度とともに発症率が劇的に増加する」病気である多発性硬化症にも効果がある可能性があります。 「ビタミンDには、私たちがまだ知らない、非常に興味深い潜在的な可能性があります。」 とホリック博士は、語ります。

UVBを得る?

ミルクやその他の強化食品および飲料(オレンジジュースなど。を参照)およびサプリメントはすべて、私たちがこの重要な栄養素を適量摂取するための方法です。 しかし、多くの人は、食品から毎日の必要量を100%摂取してはいませんし、同時にビタミンDは人工的なサプリメントとして大量にとりすぎると、有害なレベルに達することがあります。 幸いにも体が紫外線を浴びることにより自然にビタミンDを生成することができれば、内蔵された制御メカニズムが大量摂取で起こる可能性のある危険を回避できます。 簡単に言えば、紫外線照射から得る天然のビタミンDの方が安全だということです。 また、体はこのビタミンを体内に長期間にわたり備蓄することもできます。
ホリック博士によれは、それはこのように作用します。

屋外あるいはサンベッドで皮膚が290nm〜315nmの波長のUVB 照射を受けると、UVB がプロ・ビタミンD3として知られる7-ジヒドロコレステロールによって吸収されます。
UVB はプロ・ビタミンD3を分割して開き、プレ・ビタミンD3という物質に変えます。

  • 体温の影響で、プレ・ビタミンD3はビタミンDに変わります。
  • 皮膚はビタミンDの貯蔵保管庫になり、その後、ゆっくりと血流内にビタミンDを放出し、体に低レベルのビタミンDを供給します。
  • 照射が続き、ビタミンDが安全な貯蔵レベルの最高値に達すると、体はビタミンDをルミステロールという、類似の無毒で不活性の物質に変換し始めます。

「体は一定のレベルに達すると、この不活性物質を作り始めます。」 とキャスウェル博士は言います。 このプロセス全体は2〜3日にわたって主に表皮で起こりますが、表皮ほどではないものの、同様のことが真皮でも起こります。
「もしもサンスクリーンや衣服や皮膚の色素増加など、7-ジヒドロコレステロールがUVBの吸収を妨げるものがある場合、ビタミンDを生成するには、より多くの照射が必要となります。」 とホリック博士は言います。 たとえば、皮膚タイプが4の人は、同じ紫外線源から皮膚タイプ2の人ほどの量のビタミンDを合成することはできません。
有名な医学雑誌The Lancetに発表された研究によれば、やや色素のある白色人種は、1MED(最小紅斑線量)の紫外線照射を受けると、ビタミンD濃度が60倍に増加します。 しかし、同量の紫外線は、より濃い色素を持つアフリカ系アメリカ人の被験者では、有意な影響は見られませんでした。 このことは、彼らは十分な日光に当たることができない国々では、ビタミンD欠乏症になる可能性があることを示しています。

ビタミンDのメリットだけでタンニング・ビジネスの立ち上げを計画する前に、平均的な人は週に1回せいぜい3〜5分間紫外線を浴びればよいことを認識しておいてください。 体に必要なビタミンDの最大量は、実際ごくわずかな量にすぎません。 最終的に有用なプレ・ビタミンD3に変わるのは、最初のプロ・ビタミンD3のうち、せいぜい10%〜20%です。 さらに、春、夏、秋に体内で生産されたビタミンDは、冬の間、体脂肪に蓄えられます。 暖かい夏の数ヶ月の間に妥当な量の日光を浴びれば、体には3〜4ヶ月分の貯蔵ができます。
しかし、一部の人は、室内でビタミンDを特別に増強する方法を使用する必要があります。
たとえば、英国の一部(グラスゴウなど)に住む人々は、曇り空やスモッグや太陽からの距離が遠いために、屋外ではほとんど紫外線を浴びることができません。 地球に対する太陽の角度が低い冬季の数ヶ月には、屋外の紫外線は、地面に当たる前に大気中を通過して、一部はオゾン層に吸収されます。 秋と冬には、緯度が高い北部では屋外でビタミンDを作ることができない、とホリック博士は言います。
タンニング・ベッドがすぐれたビタミンDの供給源であるなら、どのくらい浴びれば十分なのでしょうか? ホリック博士によれば、1MEDを生成する1セッションは、ビタミンDの経口摂取量 10,000〜25,000 IU(国際単位)に相当すると言います。 50歳までの成人の1日あたりの推奨許容量は、200 IU です。50〜70歳の成人では、400 IUで、70歳以上では 600 IUになります。 週に一度サロンを訪れて通常のセッションを受ける顧客は、十分な量のビタミンDの供給を受けることになります。 もしも顧客が骨粗鬆症になりやすい高齢女性のように、ビタミンDの生成のためだけにタンニングをする場合は、準紅斑線量で週に2〜3回、手や顔や腕に浴びると良いかもしれません (たとえば、1/10〜1/4 )。
あらゆる広告に関するクレームと同様、タンニングをビタミンDの供給源としてプロモーションするには、非常に注意する必要があります。 たしかに実際に健康上のメリットはありますが、医学関係当局は、医学的な主張をするタンニング・サロンには激しく反対しますし、英国ではこのようなクレームは深刻な結果をもたらすおそれがあります。 問題は、これらのメリットを得るためにタンニングをする必要はないということです。 これらのメリットは、日焼けをしなくても得られるものなのです。ですから、注意してください!
広告や宣伝に制限があるにも関わらず、タンニングにメリットがあるという知識は、仕事場での各種プロセスに対する理解を深めるのに役立ち、より良いサロン・オーナーになるために役立ちます。結局、タンニングの潜在的リスクについてマスコミにたたかれて、絶えずマスコミと戦っているこの業界では、あなたのビジネスが顧客に十分な量のビタミンDを供給しており、一部の研究によれば、ビタミンDはある種のガンに対抗するのに役立つ可能性があり、体が骨を作るためのカルシウムの吸収するのを助けるということを知っておくことが役立ちます。
白人女性における乳ガン死亡率は、その地域が赤道から遠くなるにつれて上昇し、冬の長い地域で最高になります。 多くの人々は食物から十分な量のビタミンDを摂取していませんし、ビタミンDは体内に取り込みすぎると、有害である場合もあります。 しかし、紫外線の照射から得られるビタミンDは無害です。簡単に言えば、より自然で安全です。